「ソウルの馬鹿!!」
―そう叫んで、私は家を飛び出た。
ろくでもない、只の喧嘩のはずだった。なんであんなに縺れて絡まってしまったのだろう…。
「悪いのはマカだろ!?」
「ふざけないでよ?ソウルのせいよ!」
「何でそうなるんだよ!」
…原因なんてそう大それたものじゃない。ただ、物が壊れただけだった。
コップが壊れた程度で大喧嘩なんて、自分でも大げさだとは感じてた。
食器の片付けのとき、二人の肘が当たって、ソウルの持っていたコップが床へ落下。当然、粉々に砕けた。
「「…あ」」その瞬間、他の何かも粉々に割れた気がした。
「拾ってよ」
「嫌だ」
「何で?落としたのはソウルでしょ?」
「悪いのはマカだろ!?」
…以下略。あのとき、わたしが拾ってあげれば良かったのに…。
「どうしてそう何回も落とすわけ?学習しなさいよ」食器が割れたのはこれで三度目だ。流石に私も呆れてきていた。
「前のは手が滑って落ちたから…俺のせいだってわかるけどさ。今のは絶対、事故だよな?」
「食器が割れたのが事故ですって?有り得ない、故意にやったでしょ?」
「誰がそんな馬鹿げたことしなきゃいけないんだよ?」
互いのにらみ合い。彼も私も本気だった。逸らしたら負け、に等しかった。
負けたくなくて、逸らせなかった。
数秒の間。そして、下に落とされた一つの透明な、ガラスのコップの半分が遊ぶように転がった。
それが合図だった。
「…謝れよ」
「はあ?」怒り心頭に発す。
なんで、落とした奴に謝らなきゃならないの!?
「だから…!」
「私は悪くないもん!!ソウルの馬鹿!」そう叫んで、私は家を飛び出た。
外は厚い雲に覆われていて、昼過ぎだというのに真っ暗だった。
飛び出したときはぱらぱらと小雨だったのに、気付いたときには、大粒のどしゃ降りになった。
入り組んだ細道を思いっきり駆けて、脇目も振らずどんな道を走ったかも解らぬまま、勢いで奔走した。
―ついた場所はよく分からない。横に一軒の古びた店があるだけの廃れた区域。
人の気配は無い。まるでどこかに閉じ込められたみたいだった。
只でさえ悪寒がするのに、真っ暗な天井とバケツをひっくり返したような雨のせいで、恐怖が収まらなかった。
「ここ…どこ?」凍えるような強風のせいで声が掠れる。
「誰か…助けて…」小さな声で叫ぶ。
…誰も来てくれるはずがない。余計に、悲しくなった。
大粒の雨に打ち拉がれた私の頬に、一粒の滴が伝った。
いや、何粒も零れ落ちる。閉め損ねた、水道のように。
只一言、口に出来たのは、突き放してしまった、愛する、相棒の名。
「―…そう、るっ」
…来る、わけがない。知ってる、分かってる。はずだった。
なのに、奇跡に期待した。
こんな私を、絶望に陥れるかのように雨は、私の背中を叩きのめす。潰れそうだった。
もっと、寂しさが包み込もうとしてきた。
怖くて。だからもう一度叫んだ。
彼の…。大切な、彼の名を。
はっきりと、大好きな彼の名を。
「ソウル!」
「マカ!!」その刹那だった。
背後から、聞き慣れた声。不規則なリズムの足音。
―振り返った。
明るいオレンジの派手な傘。一際目立ち、雨粒でさらに輝く純白の髪の毛。
そして見慣れた、目付きの悪い、真紅の眸。
彼だと一瞬で理解できた。
「……」
いざ目の前にすると脳から言葉が消えてく。
ごめんなさい、が言えなくなる。私が黙り込むと、彼はため息をついた。
「はあ…。…探したんだぞ」そう言って、彼は私が愛用していた傘を差し出した。
受け取って良いか分からなかった。
彼はまず怒ると、思ってたからだ。彼が怒鳴り散らして、私に許しを請う、と思っていたから。
「ご…め…ん」心無しに、謝罪発言。
「…いや、俺が悪かった。ごめん」彼は眉を下げて、俯きがちになりながらも私の眼を見つめて、謝った。
…そんな真剣に見ないで。私が怒鳴っちゃった分を、どう償えば良いか、分からないじゃない…!
そう感じた時には、すでに、彼の腕の中にいた。正式に言えば、飛び込んだ。
泣き叫ぶことしか、できなかったけど、ちゃんと謝れなかったけど…。彼は私をはね除けることもせず、抱き締めてくれた。
雨に打ち拉がれた私を、優しく守ってくれた。
折角、ソウルが傘を持ってきてくれたけど…。一つで充分だ。
「帰ろう。コップは片付けて…また買えばいい」
「…うん」私が腕の中で返事をすると、彼はゆっくりと歩き出してくれた。
ありがとう、ごめんね、ソウル。
仲直りした私たちを許してくれるみたいに、雨は弱くさらさら流れるような霧雨となった。
enど。
ぴっちぴっちちゃっぷちゃっぷらんらんらん♪
梅雨で気分もどん底だったのでノリで書いてみましたが
まさかの
編集する暇が無いだと…?
大分遅れてしまわれました(´-ω-`)
もうすぐ梅雨明けしますね〜(鹿児島は)
梅雨の時期って、運動部が体育館でムンムンと市総体に向けて練習する時期ですよn(何か違う
萌えますな!
蒸し暑い体育館でべたつく汗をいっぱい掻きながらドリブルするバスケ部も良いが
頑張って外でぐしゃぐしゃのグラウンドを蹴り上げながらボールをパスするサッカー部とかも悪くない!!
☆ Z(`・ω・´)E ☆
…失礼。美術部にとっては絶対に無いシチュエーションだったもんで…。はい。
雨の表現を多く取り入れようとした結果撃沈。少ねぇ…。
雨に打ち拉がれてみたい。まぁ…俺は風邪引くけどな。