真っ暗だった。右も左も上も。地面は水に浸かっていて、…いや違う。足元の液体は血だった。血は膝の高さまであって、 とてもじゃないが歩きにくかった。
「此処は何処なんだ…」
 考えている間にどんどん不安が募っていく。怖かった。こんな暗闇に独り突っ立っていたら、後ろから何かが襲ってくるん じゃないか、と思うと悪寒がした。
「しょうがない、とりあえず歩くか」
 恐怖を取り除くため、出口を見つけるために、俺はたったひとりで歩くことになった。


「…出口がない。っつーか人の気配すら無いってどういうこと?」
 大分歩いた。けれど何も無い。光も見当たらない。周りに物が無いから、何処を歩いたかさえ分からない。もしかしたら、 ずっと同じ場所をぐるぐる回っていただけかもしれない。そんなことを想像すると頭が痛くなってくる。足が痛いけど座れる ような場所も無いのでそのまままた突っ立っていた。
 すると、前方に人影が見えた。こちらに歩いてきているようで、だんだんはっきりとしてくる。俺はずっと目を凝らして見て いた。
「…あ、マカ!」
 それは、マカだった。でも、いつもとは違った。どういう訳か、傷だらけだった。俺は急いで彼女の元へ駆け寄った。
「どうしたんだこの傷?」
「ううん、なんでもないよ。そんなことより…なんでソウルがここにいるの?」
「分からない。気がついたら此処にいたんだ。…マカもどうしてこんな所に?早くここから出たほうが―」
「それはできない」
 マカは真剣で、哀しそうな目だった。でもどんな理由があっても、こんな場所にいるのは御免だ。
「何で…?俺こんな所に居たくないよ」
「あたしは帰れない。…あいつらがいなくならない限り」
 そうマカが言った時、背後に何かがいた。しかも一匹だけじゃなく、数え切れないほどの生物の塊がいるのが分かった。
呻き声を上げてこっちに近づいてくる。恐怖のあまり身体が動かなかった。すると、マカは俺の背後に移動する。
「な、お前何を…」
「あいつらが狙ってるのはあたしだけ。盾になるからソウルは逃げて」
「そんなこと…!」したくない、できるはずが無い―。けれど、足が動かなかった。動かせなかった。
「いいから早く行け!」
 マカの声があたりに響く。それと共に、生物の塊は一気に近寄ってきた。
「でて「阿「もう「殴「助け「僕「兄「会い「痛「やめ「苦「微「諦「死「とも「帰「好「誰「怖「嫌「馬「辛「殺「何処 「救いの「く「神「貴「何が「出し「君は「お母「待っ「どう「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!! !!!」いけ」呆」だめ」れ」て」は」貴」たい」いよ」なよ」しい」妙」めろ」ね」だち」れよ」き」なの」いか」 いだ」鹿」くて」せ」だ」手を」れ」よ」様」起こった」てよ」何を」さん」てて」なっている!」


 思わず耳をふさいだ。びゅうっ、と黒い風が横を通り過ぎていく。そして、向こうの暗闇へと消えていった。俺は後ろを 振り向く。マカは、真っ赤に染まっていた。服もぼろぼろだった。
 暫くして、彼女もこちらを振り向いた。血だらけの顔で、しかも笑顔のまま。



―これが、悪夢の、いや…悲しみに突き落とされる日々の、まだ始まりに過ぎなかった。

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