「…それで、あの二人はめでたく成立だって」
  「へぇ…愛の力ってやつはすごいんだな」
  「そうね」
 キムとオックスを遠くから見ているソウルとマカ。たまたま通りかかったところに、アラクノフォビア戦の最中(さなか) にカップルとなったキムとオックスが居たわけだ。
  「あ…なあ、ちょっと聞いていい?」
 ソウルはふと思いついたように問う。
  「?なぁに」
  「マカって好きな人とか居んの?」
 質問を聞いたマカは、語勢を強くし、語尾をさらに強調して、
  「そんなもんい・ま・せ・ん!」
 と言った。少し怒っていた。
  「えー?珍しい。俺は居るけどなぁ?」
  「嘘ぉっ?!」
 マカの声が響く。周りにいた人がこちらを振り向く。
  「…マカ、声でけぇよ、ってかそんなに驚くことか?」
  「え…なんとなくソウルってそういうの無頓着かなと」
  「失礼にもほどがあんだろ。俺だって人間だからそういうのくらいはありますよ」
  「…へぇ。誰?」
 何気なく聞いてきたマカに、ソウルは戸惑った。
  「ストレートだな!答えそうになったじゃん!」
  「ちぇ…ひっかかんなかったよこいつ」
  「引っ掛ける気あったのか!」
  「あはは。…そろそろ授業が始まるから戻るね。…あぁ、今日も解剖か…
 そういうとマカはすたすたと歩いていってしまった。
  「変なの。まあいいや、俺もそろそろ戻るか」
 ソウルはマカの後を追いかけた。
 
 放課後。マカが図書室からなかなか戻ってこないので、ソウルは迎えに行くことにした。
  「おーい、マカー…あれ?」
 いつも座る場所に居なかった。
  「一人で帰るわけないよなぁ、あいつ…ん?」
 引き返そうとすると、窓際にマカがいた。外から入ってくる夕陽の光で、本を読んでいるようだ。
  「マカ、そろそろ帰ろうぜ。皆いなくなったぞ」
  「…あ、ごめん。帰ろっか」
 マカは本を棚に直すと、ソウルの元へ駆け寄った。
  「あの本は借りなくていいのか?」
  「うん、あたしもう借りた本があるから」
  「ふぅん、じゃ帰ろう」
  「そうだね」
 ソウルは引き返す前に、ちらっとマカが読んでいた本の背表紙を見た。
  『好きな人に思いを伝えよう…』
 (…マカって好きな人いないんじゃなかった?)
  「どうしたの?ソウル」
  「え?別、なんでもないよ」
  「もう、帰ろうって言ったのソウルじゃん」
  「ごめん、それでは帰りますか」
 そういいつつも、中身が気になってしょうがないソウルだった。
 
 夕食後。二人して本を読んでいた。マカは本を閉じるとソウルに話しかけた。
  「今日の午後の話。ねぇ、あんた誰がすきなの?」
  「…掘り返すなよ。というか思うに、マカって好きな人、絶対にいるよね?」
  「いっ、いないって言ったじゃん!」
 (…お?)
 今日の午後とは少し違う反応にソウルは興味を持った。
  「ほんとにいないの?」
  「・・・いないってば」
  「本気で?」
  「……いない、よ」
 すっごくいそうな雰囲気だなぁとソウルは思ったが、これ以上突き詰めると高確率でマカチョップが飛んでくるので諦めた。
  「…そう、ならいいけど」
  「もう、話それちゃったじゃんっていうかはやくいわないと本の角で二倍の力で叩くからね!!」
  「えぇー・・・」
 唖、然。脳の処理能力が追いついたところで、ソウルはマカの首元にそっと手を当てる。
  「?」
  「…(笑)」
 きっとこの笑いは、冷や汗たらしまくりながら目だけ笑ってる、そんな笑みだった。そして3秒ほどの沈黙。先に切り出したのは、 …マカだった。
  「明日の準備して、くる」
 そう言って、部屋にたったと入っていった。
 扉を閉めるとき、見えたマカの顔は、林檎のように真っ赤だった。
 

 

 

つづくんだよw   



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